オーストラリア英語について

オーストラリア英語について、私の所感を述べたいと思います。これから初めてオーストラリアへ行くとか、これからオーストラリアの人と話す、という方の参考になればと思います。但し、あくまでも「所感」であり、私の思い込みの部分もあります。また私が関係したのはシドニー、メルボルン、タスマニアのほんの限られた世界でであり、地方により当然異なることも承知はしています。そのへんのもろもろのところはご容赦を。

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オーストラリアではtodayをツダ〜イと発音する?
オーストラリア英語の話題になると、まず取り上げられるのが、「エイ」を「アイ」と発音するということだろう。todayがツダ〜イ、数字の8がアイト、合衆国がユナイティッド スタイツ。でも、こんなことはオーストラリア英語が分かるようになるために絶対克服しなければならない、というほどのものではない。それは方言のようなもので、「ここではこの単語はこれになる」と思えば、それまでのことである。またオーストラリアではみんながツダ〜イと発音するということでもない。研究室の発表会でツダ〜イという学生は半分もいなかった。むしろツダ〜イと発音されると、「彼は根っからのオーストラリア育ち?」と思う程度で、それが会話にとって大きな障害になるものではない。尚、我々がツダ〜イと使うのは、違和感があるようだ(私は言ったことはないが)。それは例えば山口県外の人が山口に来て、「知っちょるか、ここまではぶち遠かったんじゃけー。ホントヨ。」と言っても、違和感があるのと同じである。真似をしても親近感がわくものではない。

最も重要なこと。それはオーストラリア英語はイントネーションが明確ではない。
英語に自信がある人でも、初めて根っからのオーストラリア英語を聞くと「これは英語じゃない」と感じるのは、イントネーションの問題と思う。オーストラリア英語はアメリカ英語ほどイントネーションが明確ではない。高低があまりはっきりしなく、平坦である。会話中に突然、相手が話さなくなる。「どうした?」と思うと、実は疑問文で、私の答えを待っていた、ということがよくあった。懇意にしていただいたある教授は根っからのオーストラリア英語で、奥さんは「主人の英語はダメ」と言っていた。教授も「分かった単語から類推して理解してほしい」と言われていた。

中学校で習う英語は使えない?
1.「How do you do?(はじめまして)」なんて聞いたことない、通じない。
初対面で「How do you do?」と言っても、きょとんとされた、とオーストラリアで他の日本人の方と話したことがある。確かに聞いたことはない。とすると「Nice to meet you.」、「I am glad to see you.」 などが使えるのだろう。
この件で失敗したことがある。初めてメルボルン大学に着任したとき、かなり緊張していた。で、数人の研究者が机を並べている部屋に案内され、紹介されることになった。そこには1年前に退職されたというお偉い先生もいらっしゃった。その先生に紹介されたとき、緊張はピークに達していた。「ともかく、How do you do? と言われたら、How do you do? と言おう、Nice to meet you.と言われたら、Nice to meet you, too.と言おう、I am glad to see you. と言われたらI am glad to see you, too. と言おう。とにかく、相手の言ったことを繰り返せばいいんだ」と心に念じていた。と、その先生はいきなり「Welcome(ようこそ)」と言われた。とっさに「Welcome」と答えて(?)しまった。

2.「How are you?は健康状態を聞く表現というよりは...
「Hello. How are you? Fine, thank you. And you. I am fine, too. Thank you.」 なんて、会話が成立したことはない。道で出会うといきなり「How are you?」と言われ、もたもたしていると、もう相手は通り過ぎている。「How are you?」は「やあ」に近い。だから1日に何度も「How are you?」と言われることもある。研究室の教授に廊下で会い、「Hey, Takashi, how are you?」と言われ、「Fine, thank you.」と答えたときには、教授は部屋に入っていかれていた。部屋の中から「Good!」と返事が返ってきた。(この「Good」は後でまた述べる)。
この点、カナダでは「
How are you?」と言われたら「And you?」と聞き返すのが良いようだ(カナダでの国際会議に参加したとき、dinnerで隣に座ったおじさんから聞いた。たいていはそうだろうが。)
そういえば聞いたときの感じも違う。英語の「元気ですか?」は「はわ〜ゆ〜」で、オーストラリア英語の「やあ」は「はわゆ〜」。←そう聞こえているのは私だけ???
3.「Thank you.」 と言われたら
中学校では「Thank you」に対しては、「You're welcome.」であるが、これはあまり聞かなかった。「Not at all.」 なんて、皆無だ。良く聞くのが「Okay.」。私もこれを使っていた。「No problem」という学生もいたが、これは何か釈然としなかった。「ありがとう」に対し、「別に問題ない」と言われているようで。この話を帰国して日本の学生に話した。そのうちの1人は、ある日、アメリカから来られた教授を新幹線の駅まで車で送る役を仰せつかり、別れ際に「Thank you」と言われたので、「No problem」と言ったら、なんだかムッとされたと言っていた。私はこの表現を使えと言ったわけではない。

4.その他

ばったり出会ったとき、親しい間柄なら「Hi.」、「Hello.」などが良いと思う。またオーストラリでは良くfirst nameをつけて呼びかける。「Hi, Takashi」みたいな感じで。私もそうしたかったが、どうも照れてしまって...。でも付けたほうが良かったと後悔している。

ある日、銀行のキャッシュディスペンサーの前で教授にばったり出会った。教授は「コーチュー!」と言われた。「甲虫?」 そのときはそれしか思いつかず、日本人特有のニコッとしてその場をごまかしたが、別れた後、全く関係ないが、カブトムシが何度も頭に浮かんだ。しばらくして、「catch you」の過去形ではないかと気が付いた。英語の先生(オーストラリアで家庭教師を雇っていた)に聞くとまさにそのおりで、非常に近い関係の場合に使うとのことだった。「見つけたぞ!」という感じだろう。「主語がない?」、「なぜ過去形?」なんて、あたりまえ。中学生で習った英語はいったい...。

その他、特記事項
How you going? /How is going?
これも動詞が変だったり、名詞のない文章である。「どうだい?」という意味で、ばったり出会ったときに良く使う。doingではなくgoingであるところがオーストラリアの特徴である。エレベーターの前で教授にばったり会い、「How you going?」と言われた。私は「昨日は○○のサンプルを調製し、今日はその粘度を図ったら△△だった。明日は□□をしようと考えている。」と答えた。しかし、このようなときは「Everything fine.」とか、「I am doing my experiments very hard.」ぐらいでも良かったようだ。相手が同僚なら、単に「Good.」でも良い。日本語にすると、「どうだい?」、「まあなんとかやってるよ(かなりの意訳?)」 みたいな感じかな。
Good
研究室の教授はgoodを多用していた。「Good, good, good」と三連発されるときもあった。マイケル(同時期にアメリカからきていた同僚)はこれをオーストラリア英語(人?)の特徴と言っていた。
旅行中の人と別れるときに「良いご旅行を」の意味で「Have a nice trip.」というが、オーストラリアでは「Good trip on you.」という場合がある。これはオーストラリアの先生が日本に来られたとき使ったが、目を丸くされた(悪くはないだろう)。「Good on you.」などもよく聞いた(クドオンユウ)。
Mate
これはオーストラリア英語について書かれた記事ではたいてい取り上げられているだろう。呼びかけの時にfirst nameを使ったり、この「mate」を使ったりする。「mate」はスクールメイトやクラスメイトのメイトである。親しみを込めて話すときに使われるが、私に対して使われたのは共同研究をしていたモナシュ大学の博士課程の学生(年齢がかなり近かったと思う)に初めてオーストラリアで会って、大学の案内をされたときのみだった。「mate」をつけるのは歴史的な背景もあり、我々の方から率先して使うのはおかしいと思う。
See you later.
「さようなら」は「See you.」である。直訳すると「(また)会いましょう」ということになる。オーストラリアではこれに「later」(=後で)をよく付ける。これも歴史的背景があるらしい。しかし、「後で」とあえて付けられると...。メルボルン大学で研究室の女性が帰り際、私に「See you later.」と言ったときは、正直...。

都会と地方
メルボルンといえば、オーストラリアでも有名な観光地の1つだし、移民も多く、大学には留学生があふれている。よって、ここに住む人々は結構でたらめな英語を聞き慣れているといえる。だから割に英語が通じる。分からなかったら言い方を変えてくれたり、ゆっくり話してくれる(これができない人も多いが)。オーストラリア旅行をしたとき、結構通じて自分の会話力もまんざらでもない、と思った人もいるかもしれないが、みやげ物売り場で、先に述べたようなイントネーションのない、平坦な英語を話す店員を見たことはない。
 少し地方に行くと、この原則は成り立たない。タスマニアを車で旅行したとき(景色はまるで北海道を走っているような感じだった)、髪の黒い人はほとんどいなかったし、話す人はみんなネイティブのスピードで、さらにそれを私が全て理解していると思っているようだった。最後にホバートでレンタカーを返すときに、ショップの女性店員は「旅行はいかがでしたか?」を皮切りに、何かいっぱい話し掛けてきて、適当に「Yes」と答えていたが、ある質問の中に「damage」という単語が明確に聞こえてきて、その時だけ、妙に自分の頭が鋭く反応して「車をぶつけたりして、壊れたようなことはないですか?」との訳文を頭の中で作成してきた。そのおかげで「No」と答えた。後で、その前に適当に「Yes」と答えていたことは良かったのだろうかと不安になった。

日本語の「はい」は英語の「YES」とは違う。判っているけど癖が抜けない場合には。
 英語の授業で「YES」は肯定、「NO」は否定と習う。しかし相手の話している内容に自分が同意しているのに、相手が否定文を使ったからといって「NO」と言いながら賛同するのは、抵抗がある(←分かるかな?この日本語)。大体、会話の中でいちいちそんなことを考えて返事をしていたら、反応が遅くなる。さらにBoger教授は付加疑問文を多用していたので、心の準備ができていないうちに、返事を求められる(←分かるかな、この状況)。さらに英語の時間のように「ドント;don't」とか「キャント;can't」などと、「ト」が明確には聞こえてこない。どうしても日本流の返事の癖が抜けなかった私は、苦肉の策。同意するときは「You are right. または That's right.」と答えることにした。これなら否定だろうと肯定だろうと、「貴方(の言っていること)は正しい」となる。「I agree.(同意します)」とか、単に「Agree.」でも良かった(これはマイケルが良く使っていた。) 同意しないときは「Oh〜.」 これって邪道?

最後に
聞き返すのは失礼なことではない。聞き返さない方が悪い!
どうしても日本人は分からないと適当なあいづちのつもりで、「Yes」といってしまう。でも学生同士の会話を聞いていても分かるが、結構頻繁に相手の言うことを聞き返している。このとき、中学校(高校?)で習ったような「I beg your pardom?」や「Will you say it once more?」なんて、かしこまった表現は使わない。「Sorry」なんて言って聞いている。そんな感じだから、ネイティブでない我々が一度も聞き返さずに会話できるはずがない。


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