第3回 UBC-McGill Bi-Annual Int. Symp. 
on Fundamentals of Mineral Processing
に参加して
1999年8月  於 カナダ ケベック

 『粉体工学情報センター』殿の渡航補助をいただきました。
<会議の概要>
1999年8月22日から26日にカナダのケッベック市で開催された「鉱物加工の基礎に関するシンポジウム」、副題は「Use of Polymers in Mineral Processing」に参加した。シンポジウムは12のセッションで構成されていたが、その内容は各種粒子の凝集・分散特性やその評価方法、界面活性剤・凝集剤の全般、浮選、スラリー化など、多岐に渡るものであった。これに対してChairmanのJ.S. Laskowski教授(ブリティッシュ コロンビア大学)は冒頭の挨拶で、「我々は扱っている物質も違うし、添加物質の分子量も様々であるが、一同が1つの傘の元に集まり、会の進行と共にプログラムを作っていこうではないか」と言われたことが印象深かった。本シンポジウムでは日本人の参加者は私1人であり、「日本からDoctor SAEKIが来ている」と紹介され、また他の発表者はほとんどが英語を公用語とする国の出身者であったことから、非常に身の引き締まる思いがした。この会議はカナダの石油・金属・鉱山学会が主催となり「38th Conference of Metallurgist」という形で、他の12シンポジウムと同時に開催されたものである。事務局に問い合わせたところ、参加者は700人以上、参加国は30ケ国以上という規模で行われたとのことであった。

<私の発表タイトルと概要>

Dispersing and stabilizing additives for coal water
mixtures with an upgraded low rank coal

「改質低炭化度炭を用いた石炭スラリーの分散剤と安定化剤」に関する研究

T. Saeki and S. Yamamoto (山口大学)
2557 Tokiwadai
Ube-city, Yamaguchi 755-8611, JAPAN

M. Ogawa (大日本製薬梶j
Dainippon Pharmaceutical Co., Ltd.
6-8 Doshomachi, 2-Chome
Chuo-ku, Osaka, 541-0045, JAPAN

ABSTRACT
Low rank coals have been considered beneficial energy sources in recent years due to their low costs and huge deposits. The present authors have proposed a new upgrading method for low rank coals, which is a combination of vacuum drying and tar coating processes. By using such upgraded coals, preparation of coal water mixtures (CWMs) should be an effective way to reduce the transportation cost of coals. Since the surface property of an upgraded coal is more hydrophobic than that of a normal bituminous coal, the selection of suitable additives both for fluidity and stability of CWMs is important. In this study, Indonesian coal (Banjarsari) was used to prepare CWMs using eight commercially available surfactants. Also, suitable stabilizers which can prevent the sedimentation of coal particles were evaluated. The information obtained in this study for various kinds of additives would be valuable for the preparation techniques of CWMs.


<私の発表に対する質問>
70人程度が私の発表を聞いていた。発表が終わって質疑の時間になったとたん、10人以上が手を挙げ、面食らった。質問の内容は、スラリーの安定性の評価方法に集中し、他に本技術の採算性や石炭改質利用一般に関する内容が中心であった。


<国際会議での一コマ>
●発表当日の朝食
この会議では発表当日の朝、発表者と座長がともに朝食をとり、発表者の紹介のためのインタビューや、研究内容を簡単に話す時間が持たれた。しかし、私のセッションの他の発表者達は1人も現れず(寝ていたのか?)、2人の座長と3人で朝食をとった。座長のお一人はカナダ ブリティッシュ コロンビア大学の教授、もう一人はオーストラリアのCICROの研究員だった。打ち合わせはすぐに終わり、残り時間は3人でゆっくり食事をしたが、2人が会話の途中に、「あなたはどうですか?」みたいな感じで話を振ってくるので、会話の理解に集中し、朝食の味は今ひとつ分からなかった。オーストラリアに半年住んでいたとはいえ、やはりオーストラリア英語は判りにくかった。ほとんど文脈から類推して答えていた。それに比べ、カナダの英語は格段に判りやすかった。

 
← こんな感じの朝食でした。

ChairmanのJ.S. Laskowski教授
教授とは以前、日本での国際会議で覚えていただいていて、今回のケベックでの会議の参加も、この先生の案内があったからである。初日のパーティーのとき教授の奥さんに「あなたの名前はたかしなの?、それともたかし?」と聞かれたが、返答にもたもたしていたら「分からないみたいね〜」と立ち去られた。前者は[sh]、後者は[si]であったが。発音符号が読める人には意味がわかるかな。日本語の「し」はどっちだっけ?

 ← Laskowski教授と



<ケベックとは。行って感じたこと、あったこと、事件など>

カナダ ケベック州ケベックはかつてフランスの植民地であった歴史的な町である。イギリスの支配下となった時代があるにも関わらず、住民はフランス系カナダ人が多く、公用語もフランス語である。ヨーロッパ様式の古い町並みで、シティーは1日をかけて歩くと、ザーと見れる感じの広さであった。学会の会場から徒歩5分、サン・ルイ門をくぐるとシティーが広がる。
         サン・ルイ門付近で ↓



 
何をやっているんだか

サン・ルイ通りはヨーロッパ風の町並みで、レストランやおみやげ物屋が並んでいた。



ぶらっと店に入ると「ボンジュール」と声をかけられ、「Hi」と返事をしたとたんに、店員は英語で話しかけてくる。公用語はフランス語であるが、ほとんどの人がバイリンガル(英語もフランス語も話せる)である。国際会議の案内には、公用語は「英語」と書いてはあったものの、ReceptionやBanquetはフランス語がしばしば使われ、他の州から来たカナダ人の研究者でさえ、「別の国のようだ」と言っていた。市内の治安は大変良く、また町にはそれほど日本人を見ることもなかった。英語を使う必要のない海外旅行が増えた昨今、魅力的な都市であると思う。

食事には注意が必要。とにかく大盛り。まあ海外ではよくあることであるが。「サラダとイカリングとステーキとスープと...」と一通り注文すると、「イカリングだけにしておけば良かった」と後悔することになる。以前、学食(山口大学の)で無意識に竜田丼とご飯大盛りをお盆にのせてお金を払い、食べはじめて気がついたときの心境に似ている。←分かりにくいたとえ。

 ←「食べるぞ!」と気合を入れなければなない。


ケベックのシティーを歩いた印象から、「おしゃれな日本のショッピング街とほとんど同じ」という感じがすごくした。売っているものの品質といい、価格といい。唯一、これは決定的に違うと思ったことは、ドアに「PUSH(押す)」と書いてある場合は、絶対に押さなければ開かないこと。日本では引いても押しても開くドアが多いが。

  

        ↑ ダルム広場                        ↑ シタデル

●最後に事件
 順調そうに思えた出張だったが、街中を歩いているときに人ごみにもみくちゃにされ、肩にかけていたカメラが振り飛ばされ地面に衝突、破損した。ボディーにヒビが入り、カメラの動作が不安定になった。ヒビを手で押さえながら撮影するという不都合はあったが何とか乗り切った。帰国後、「自認書」を作成し、保険会社に請求。手数料くらいを取られたが、ほぼ全額保障され、カメラはよみがえった。しかし、このカメラは2002年4月、デンマークで開催された国際会議に行く途中に盗まれる運命であった。

  詳しくはこのHPのどこかにある(リンクは張らないよ)。



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