山口大学大学院創成科学研究科 工学系学域 循環環境学分野 環境化学・生化学プロセス工学教育研究分野 佐伯・貝出研究室 Dr. Saeki and Kaide's Laboratory |
<研究テーマ> 配管抵抗低減技術 −−界面活性剤を用いた流体輸送の省エネルギー |
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配管抵抗低減効果の説明について − リンス効果? 「界面活性剤によるリンス効果」とか、「水がさらさらになる」というものがあります。この表現は我々のグループは一度も使ったことがありません。確かにLSP-01の主成分である界面活性剤は洗髪時に使うリンスによく似た分子構造をしています。しかし、少し考えたらおかしいことがわかります。水にリンスを加えるとさらさらになるなんて。実際、レオメータという流体の粘っこさ(粘度)を測定する装置で評価すると、粘度は数倍から数十倍になっています。 配管抵抗低減剤を添加すると流体はさらさらするのではなく、多少、ねばねばします。しかし、その流れの抵抗は激減する。それがこの技術の不思議で、おもしろいところなのです。 伝熱が悪くなるという風評がこの技術の普及を鈍らせてきました。当初からそのような現象は実用化では観察されておらず、最近の研究室の実験でもそれは立証されつつあります。 それぞれの設備に最適な形態を選ぶことが重要であり、そのためには設備の調査、初期投資、維持管理費を加味して、回収年と省エネメリットを試算することが必要になります。 |
空調設備の循環水にLSP−01を添加することによって、流れの抵抗が著しく減少します。例えば50℃の温水が流れている直管(内径;20mm)にLSP−01を5000mg/l添加した場合、流体摩擦係数はLSP−01を添加していないときに比べて70〜80%低下します。実際の空調設備の配管は直管のみではなく拡大部、縮小部、曲がり管などの付属物があり、さらに管径も様々です。よってすぐさま70〜80%の省エネルギー化が達成できるわけではありません。これは適用する施設やその運転状況によって異なるということですが、実績値としてLSP−01を添加すると10〜30%の流量増加が達成されることが判っています。 既設の熱媒輸送動力(ポンプなど)が能力不足である場合は、LSP−01を添加するだけで流量が増加し、循環ポンプの能力不足を補うことができることになります(下図)。 ![]()
3.この設備は能力不足という問題があるわけではないので、QLSPという過剰流量は必要ありません。よって次に示す方法で流量をQwに近づけます。 ● 省エネへのアクション:その1 4.4台の循環ポンプのうち、1台の運転を停止します。これによって理屈上は流量が3/4となり、1.25×3÷4=0.94 となって、Qwに近い流量となります。この場合、停止した1台のポンプの電力がランニングコストの低減となります(下図)。 ![]() この方法はLSP−01を添加するだけで、ハードの変更なく達成できる省エネルギーですが、 1)既設の循環ポンプの台数が少ないとき、 2)必要な循環水量の変動が大きいとき、 は注意が必要です。それはLSP−01による流量増加量が1台のポンプの吐出流量未満になる可能性があり、総流量が不足する場合があるからです。 ● 省エネへのアクション:その2
図は1つの循環系に4台のポンプが接続されている例ですが、設備によっては空調設備内に複数の循環系統があり、この系統ごとに1つ、または複数のポンプが備え付けられている場合があります。このときは系統ごとにインバーターを取り付け、系統ごとの負荷変動に応じた運転制御をすることで、最適な省エネ化が達成されます。 ![]() ![]() ![]() |