山口大学大学院創成科学研究科
 工学系学域 循環環境学分野

   
環境化学・生化学プロセス工学教育研究分野
 佐伯・貝出研究室
Dr. Saeki and Dr. Kaide's Laboratory
       

<研究テーマ>

 配管抵抗低減技術

    −−界面活性剤を用いた流体輸送の省エネルギー



  



イノベーションジャパン2008に出展
(東京国際フォーラム)






配管抵抗低減剤  LSP-01A/M



 配管抵抗低減剤LSP−01はビル・工場・病院・デパート・ホテル・公共施設などの空調設備の省エネルギーを可能にする添加剤です。LSP−01はカチオン系界面活性剤と対イオン、および複数の防錆剤を最適な条件で混合した商品で、空調設備の循環水に添加するだけで流れの抵抗を著しく減少させ、ポンプ輸送動力の省エネルギー化に役立ちます。さらにLSP−01は一般配管に使用されている鋼管はもちろんのこと、熱交換器に多く使用されている銅製配管の腐食防止効果も優れており、システムの延命に効果を発揮します。 
 LSP-01AとLSP-01Mは配合している防錆剤が異なります。
 

はじめに

 『省エネ効果が20%から50%を越える』、というところがこの技術の画期的なところです。

我々が開発した添加剤を使用することによって、これまで多くの実機設備でこの効果が実現できています。最近、この技術がマスコミに取り上げられることが多くなりました。

1.概 要

 流体輸送において、流体に希薄な高分子を添加すると、流れの抵抗がニュートン流体と比べて激減する現象は1948年に初めて報告されました。このいわゆる「抵抗低減効果」はその発見者の名前から「トムズ効果」と呼ばれています。この技術を応用すれば、流体を輸送するためのエネルギーを低減できる(省エネルギー)と考えられ、1979年に原油のパイプライン(Trans Alaska Pipeline)でフィールドテストが行われたことは良く知られています。その後、化学合成技術も飛躍的に発達し、現在、アメリカの原油の40%以上は抵抗低減効果を得るための高分子添加剤が入っていると言われています。一方、効果の発現メカニズムについては、未だ十分に解明されているとは言えませんが、添加された高分子糸が流体中の渦の発生や運動を制御する、というような説明が妥当なところでしょう。

 一方、ある種の
界面活性剤も同様の現象を示すことが知られています。トムズの報告の10年後にNashがNature(1956年) と J. Colloid Science (1958年) にカチオン系界面活性剤(CTAB)とサリチル酸誘導体によって粘弾性のあるゲルが生成されることを報告しました。しかし、この論文には抵抗低減効果については書かれておらず、10年後に同じNatureに掲載されたGaddの論文で、CTABとサリチル酸の混合物が抗力減少効果を示したことが初めて報告されました。

界面活性剤による抵抗低減効果は、流体中で界面活性剤と対イオンが
棒状のミセル構造を形成し、これが乱流構造の制御に寄与するものと考えられます。高分子と比べ、せん断力による構造破壊を受けても、再度構造を復元できることから、循環系への応用が期待され、これまで研究が進められてきました。

界面活性剤による抵抗低減効果の実用化については、デンマーク(エネルギー省が実施)、チャコ(オハイオ州立大学が実施)、ドイツ(ドルトムント大学が実施)の例があるものの、いずれも実証試験で終わっており、稼働状態のものはありません。

これに対し、わが国ではエルエスピー協同組合、(財)周南地域地場産業振興センター、山口大学工学部(当研究室)の産学公共同研究グループがこの技術の実用化にいち早く取り組み、配管の防錆効果も兼ね備えた「配管抵抗低減剤LSP-01」を商品化しています。本剤の基本特許は周南地域地場産業振興センターが取得しており、これに関連する特許は山口大学、エルエスピー協同組合で共同出願しています。

本技術の実機導入件数はわが国が世界トップであり、国内の実施例は200件を超えています



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              ★平成26年より、LSP-01は周南水処理鰍ナ取り扱われています。